「Webデザイナー」と言っても色々で、Web制作会社でサラリーマンしている人もいればフリーランスで個人事業している人もいます。
ここでは「インハウスWebデザイナー」の仕事について書いてみます。
独立・フリーランスを目指している人は、一度インハウスWebデザイナーを経験することをおすすめします。
インハウスWebデザイナーって何?
インハウスWebデザイナーというのは企業に属する組織内部のWebデザイナーのことです。
IT・Web業界の企業に限りません。たとえば、建築事務所や不動産屋でホームページを保守・管理する人、またはアンティーク家具屋や洋菓子屋で商品を撮影してWebサイトに掲載する人などもインハウスWebデザイナーです。
仕事内容は職場によって大きく異なります。
Web制作会社のWebデザイナーとは異なる仕事形態
Web制作会社で働くWebデザイナーと大きく違う特徴は以下の3点です。
- 自社のWebサイトのみを制作・管理
- 一人でカバーする範囲が広い
- 周りが素人(Web専門外の人達)
上記3点含め詳しくは後述しますが、インハウスWebデザイナーは他業種の職場で一人でWeb制作・管理をするという特殊なWebデザイナーと言ってもいいでしょう。雇用されている点をのぞけばフリーランスと同じです。
僕自身も未経験からはじめて、医療機関のインハウスWebデザイナーとして2年勤務しました。インハウスWebデザイナーのメリットもデメリットも身をもって体験しましたが、フリーランスとなった今振り返ってみると総じて良い経験だったと言えます。
インハウスWebデザイナーの仕事
インハウスWebデザイナーの仕事は、単なるWeb制作にとどまらず、Webマーケティング&集客まで期待されることもあります。
具体的な業務内容
自分の経験を元にインハウスWebデザイナーの具体的な業務内容を書いてみます。僕の場合は、医療機関に勤務してグループ施設併せて8つのクリニック&スパ施設サイトを管理していました。
主な業務は以下の通りです。
- Web:自社サイトの制作&保守・管理、SEO、Webマーケティング
- DTP:名刺、チラシ、看板、社内新聞などのデザイン制作
自社ホームページの新規制作や修正・削除などのWebまわりの業務はもちろん、DTP(紙媒体のデザイン)業務も依頼される機会も多いので、DTP特有の知識も多少必要です。小規模な職場であればあるほど「何でも屋」になっていく傾向が高いです。
周りもWebデザイナーという職種を正確には理解していないので、乱暴にいえば「パソコンに強い人」程度で見られていることも多いでしょう。ネットワークが不調のときやプリンタが壊れたときなども呼ばれたりします。
職場の環境
企業の事業規模にもよりますが、インハウスWebデザイナーは基本的に少人数のチームまたは一人です。小規模の企業ならほぼ確実に一人でしょう。
異業種の職場ならば、自分以外は全員IT・Web素人という環境です。Webと全く関係ない業種の人達なので、PC操作すらできない社長さんやスタッフもたくさんいます。自分の仕事の話をするときも専門用語は使えません。
「素人にわかるように、わかりやすく、イライラせずに、根気強く」説明できるコミュ力が自ずと必要になります。笑
インハウスWebデザイナーに必要な知識とスキル
インハウスWebデザイナーは、1点特化のスキルより幅広くなんでもできる知識と能力が望まれます。
Web制作・保守関連で必要な知識とスキル
- Photoshop・Illustrator(・Adobe XD)
- HTML・CSS
- jQuery
- WordPress(CMS)
Javascriptができるに越したことはないですが、jQueryが使える程度でも大丈夫です。PHP&MySQLに関しても、WordPressを管理する上で必要な知識レベルで大丈夫なケースが多いでしょう。
要するには、一人でホームページ制作・管理できるスキルレベルが必要です。
管理・保守関連で必要な知識とスキル
- アクセス解析
- CMSのバージョン管理、バックアップ
- サーバー・ドメイン・社内メール管理
その他、歓迎される知識とスキル
- Webマーケティング
- SEO
- コミュ力
SEO、マーケティングに強ければ可愛がられます。上の人(雇用主)は技術者ではなく経営者なので売上が最優先です。かっこいいデザインや先進的な機能より集客できるWebサイトに興味があります。
Web集客で実績を残しておくと、フリーランスになったときも業務委託してくれます。
上記でわかる通り、制作会社のように分業制ではないです。ディレクター兼UI/UXデザイナー兼コーダー兼プログラマ兼Webマッケターって感じですね。
「Webデザイナー」というのは便利な言葉で、世間では「Webデザイナー=イラスト描けて、デザインできて、コーディングできて、プログラミングできて、SEOもWeb集客もできる人」という目で見られることもしばしばです。
インハウスWebデザイナーのおもしろさ
インハウスWebデザイナーは良くも悪くも「Webに詳しいのは自分だけ」という立場にあるので、この点を活用していくと自分の仕事が面白くなります。
Web周り全てを自分がコントロールできる
デザインはもちろんWebサイトの仕様を全て自分で決められるので、かっこいいデザインを取り入れたり、最先端の技術を組み込むこともできます。
ただ裁量次第というのは裏を返せば、舵取りを間違えば迷惑をかけるし、トラブっても誰も助けてくれないということ。失敗したときの責任は全て自分です。
Web集客にダイレクトに関われる
単なるWeb「制作」だけでなく、「集客」業務に携われるのも醍醐味のひとつです。
「こういうメディアを立ち上げて知名度を高めましょう」「ここの口コミサイト活用しましょう」みたいな集客戦略の提案もできます。
- SEOの知識を深めて検索順位を上げてアクセス数を増やす
- Web集客を強化して商品を売る、予約件数を増やす
こういったことを積極的に取り組んで、売上に直結する成果を出すと経営者に喜ばれます。自分もヤリガイを感じられます。
フリーランスになるステップになる
僕がインハウスWebデザイナーを選択した理由がこれです。
上述しましたが、インハウスWebデザイナーはフリーランスに直結しています。
僕は一刻も早くフリーランスになる必要があったので、Web制作会社に入ってチームの一員になるより、全てのWeb業務を1人で担当する経験と実績を手にしたいと考えていました。
個々のスキルを深めてスペシャリストになるより全体を見渡せるマネージメント能力が高い方が、フリーランスになっときに請けられる仕事の幅が広がるのでアドバンテージになると考えたからです。自分が弱い分野は外注を利用すればいいですしね。
他業種の人と一緒に仕事できる
仕事面でのメリットはあまりないですがど、全然違う畑の人と一緒に仕事をするというのは刺激があって結構おもしろいです。
例えば、自分の場合だと打ち合わせの相手が医師だったり、休憩室で雑談する相手が看護師や医療事務のおばさんだったりしたので、ずっと職人の世界で生きてきた自分にとて新鮮な体験でした。
「素人目線」が勉強ができる
エンジニアやデザイナーの目は独りよがりになりがちですよね。専門技術職の審美眼は大切な能力ですが、ときにユーザーを置き去りにしているケースも多いです。
その点、インハウスWebデザイナーの職場はWeb素人ばかりなので、常に素人目線のフィードバックをもらえます。忘れがちな「ユーザー目線」を再確認できるいい機会になります。
また職場では、Webのことを知らない人と専門用語なしで話す機会が自然と多くなります。「HTML」や「コーディング」「ワードプレス」という言葉すら使えません。
そのため、Webデザイナーの仕事について「誰にでもわかりやすく説明にはどういう言葉を使って、どういう話し方をすれば納得してもらえるか」を考えるクセがつきます。
フリーランスになったときも取引相手は素人です。ここで得た経験がフリーランスになったときに生きてきます。
インハウスWebデザイナーの苦悩
逆にインハウスWebデザイナーだからこその苦痛もたくさんあります。
誰にも聞けない
ダメ出ししてくれる先輩もいなければ、腕のいい同僚もいない。わからない所を誰かに聞くことも出来ないし手伝ってもらうこともできない。トラブルも全て1人で解決しなくてはいけない。イヤな汗をかくこともあるでしょう。
逆に言えば、この緊張感が自分を育ててくれます。
スキルを人から盗めない
Web制作会社などでは上司、先輩が教えてくれたり同僚から技術を盗んだりできますが、インハウスWebデザイナーの場合はその機会は少ないです。ノウハウを共有する相手がいないです。
便利なツールや効率のよい作業術などを身につけるには、自分で検索したり本を読んだりして能動的に動かないかぎり手に入らないです。
デザインの幅が狭まる
インハウスWebデザイナーは自社のWebサイトしか管理しないので、基本、同じテイストの作品ばかり作ります。配色やトーンも同じような選択肢になってきます。その結果、デザインの幅が広がりません。
例えば僕の場合は、医療機関のWebサイトを管理だったので「信頼性、清潔感、都会的、高級感」などのテイストは得意ですが、逆に「カラフルで活力が感じられる楽しい」デザインは今でも苦手です。
何でも屋にされる
上でも書きましたが、職場によっては「何でも屋」として扱われる可能性もあります。僕の場合もそうでした。よく依頼されたのが、PCの修理、アプリのインストール・設定、ネットワークの不調改善…など。
本業であるべきWebデザインができなくてストレスになるケースもあるでしょう。
インハウスWebデザイナーに向く人/向かない人
だいたいここまでで書いてしまっていますが、インハウスWebデザイナーに向く人/向かない人をまとめると以下のような感じになります。
インハウスWebデザイナーに向く人
- Web制作・保守管理の全行程を管理したい人
- 1人(少人数)でやりたい人
- 異業種の人と接点を持ちたい人
- 将来フリーランスになりたい人
制作会社でいろんな職種・立場を経験しスキルも実績も蓄積した後に、インハウスWebデザイナーになるのは面白いだろうなと思います。
インハウスWebデザイナーに向かない人
- デザイン設計が苦手な人、やりたくない人
- 特定分野(プログラミング、デザインなど)を極めたい人
- 技術者の仲間と仕事をしたい人
どうしても業務の幅が広くなってしまうので、特定分野・技術を極めていきたいスペシャリスト体質の人は向かない可能性が高いでしょう。
インハウスWebデザイナーの仕事の探し方や求人サイト
ここまで書いてきた通り、インハウスWebデザイナーの職場はWeb業界ではないので、仕事探しをする場合はIT・Web業界専門エージェントや求人サイトを使うより、一般の求人サイトを利用する方が仕事を見つけやすいでしょう。ハローワークの求人にも載っています。
インハウスWebデザイナーの仕事探しは一般的な求人サイトで
インハウスデザイナーをやるならWeb業界ではなく他業種の職場で働く方が面白いです。
インハウスデザイナーの求人は、IT・Web系の転職エージェント経由より一般的な求人サイトで地域の求人案件を探すといいです。ハローワークでもあります。
「Indeed (インディード)」などの求人サイトをのぞいてみると「Webデザイナー募集!!」という案件がたくさん見つかります。
企業サイトの「採用ページ」で求人情報を探す
また、企業サイトの「採用ページ」でWebデザイナーの求人を掲載していることもあるのでチェックしてみると面白いです。「あの会社、Webデザイナー募集してないかなー」なんてワクワクしながら職探しをする楽しみもあります。
探してみると、意外に募集している企業は多いです。
他業界のインハウスWebデザイナーは給与が安い傾向
最後に一点、インハウスデザイナーのデメリット。
特に他業種の求人案件では、Webデザイナーは専門職という認識がなく、一般的な事務職やパートと同じレベルで給与設定されていることが多いです。
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